月例三三独演

紀尾井町ホール 小ホールにて
柳家三之助 「粗忽長屋
柳家三三  「真景累ヶ淵 宗悦殺し」
仲入り
柳家三三  「死神」

あらためてネタを見て「息が詰まりそうだ…」――とはパンフレットに三三が記した一文。
口演前にパンフを見ていなかった当方は、仲入り後に「死神」に入った瞬間「胸が焼ける」と思った。

「宗悦殺し」は緊張感を湛えたよい出来、マイクを使わないおかげか、声の表情がとてもよく伝わってくる。宗悦と深見新左衛門とのやり取りが秀逸だった。金を返せないと言う新左衛門に皮肉を交えてねちねちと迫る宗悦のセリフには刃物の上を素足で進むような危うさがあって、いつ新左衛門が切りかかってくるかとドキドキしながら噺の世界に引き込まれた。宗悦をあまりねちっこく演ると、罪なき盲人という印象が薄れやしまいかとも思ったが、苦労と節約の末に貯めたであろうカネ、盲という立場にあって自らと家族を守る唯一の手段であるカネを踏み倒されそうになった宗悦からすれば、あれくらいの嫌味と挑発は当然かもしれない。あの場面で宗悦の欲をきちんと描けばこそ、その後の因果も生きてくるわけだし。
新左衛門乱心の場面は期待したよりもアッサリ目。発端の中で一番怪談じみる場面なので、もっと怖がらせてくれてもよかったんだけど。

昔は好きだった「死神」だが、最近はどうもダメである。
この噺の細部の嘘や無理がどうしても気になるのだ。