落語教育委員会 柳家喜多八・三遊亭歌武蔵・柳家喬太郎三人会

なかのZERO小ホール
三遊亭歌彦 「反対俥」
柳家喬太郎 「禁酒番屋
仲入り
三遊亭歌武蔵「煙草の火」
柳家喜多八 「宮戸川

いつもの携帯電話を切ってくださいコントで幕開け。なんと喜多八がナースに。

前日の談春禁酒番屋」から20時間も経たないうちに喬太郎禁酒番屋」。
この噺は骨格がしっかりしているから、変えようがないんだろうし、同じ柳家だからということもあるのか、談春喬太郎ともにほとんど同じという印象。油を持っていく場面での役人のいきなりの酔いっぷりもよく似ている。喬太郎オリジナルのクスグリと思われるのは、小便を持っていった場面での、役人の「地酒か?」というセリフくらいだった。この噺はいろんな人で聴いたが、これまでのところはさん喬が一番かな。侍は侍らしく、酒屋の奉公人は三人がそれぞれ違うキャラになっている。全体に何ともとぼけた空気が流れ、汚い噺があまり汚く思えない。またどっかでめぐり合いたいな。
歌武蔵は相撲と落語の贔屓筋の違いをマクラに。これが滅法面白かった。相撲は谷町、落語はお壇、歌舞伎は花。「花」の字を分解するとカタカナの「ヒ」「イ」「キ(草冠を縦にすると)」になるから。なるほどね。関取を酒の席に呼ぶと、お迎え、銀座の高級クラブ、ルイ13世2本、祝儀、車代、お付の若い衆への小遣いで、一晩50万円になるとか。それに引き換え落語家は・・・。祝儀にまつわる話から金持ちがカネをばら撒く「煙草の火」に。笑いどころの少ない噺だが、カッチリとした構成で最後まで引き付けるよい出来。
喜多八の「宮戸川」は何と言っても霊岸島の叔父さんがいい。談春宮戸川」のばあさんもいいが、いささか妖怪じみたあのばあさんはキワモノの感がなきにしもあらず。戸を叩く半七を待たせたまま、喜多八の叔父さんは長々と半七の野暮天ぶりをぼやき「俺が若けえ頃は」と一人語ちながら自慢話をする場面がいい。「もっと世間を見ろって言ったら屋根ぇ上がりやがった。あれが実の兄かと思うと情けねえ」。経済的な成功を収めたが融通の利かない堅物の兄を難じるセリフの中に、ほとんど嫉妬が感じられない。貧乏をしてきたが、世間をきちんと見てきた自分の生き方への自信のようなものを感じる。(客観的にそうであるかは別にして、主観としては確かに)女にモテ、遊びも芸も一通り経験したチョイ悪を自認する叔父の造形がきれいに浮かび上がってくる。半七とお花を二階に上げてしまったあと、ばあさんが語る思い出話がまたいい。独身時代に長唄のおさらいで舞台に上がった若き日の二人に客席から冷やかしの声が上がる。遠い目になってうっとりと話すばあさんとそれを鬱陶しがる叔父さん。階下と階上で二つのラブストーリーが交差するとてもよくできた構成である。