渋谷東横落語会

セルリアンタワー能楽堂にて

三遊亭歌五 「子ほめ」
柳家喜多八 「宮戸川
三遊亭圓丈 「居残り佐平次
仲入り
三遊亭圓歌 「坊主の遊び」

何とも懐かしい「東横落語会」の響き(喜多八出演にも)に引かれて、「渋谷東横落語会」に。
セルリアンタワー能楽堂。嫌な予感はしていたが、当たってしまった。
ここは落語を観る場所でも演る場所でもない。客席が三方向(正面、中正面、脇正面)に分かれる構造から仕方ないが、演者は舞台中央から、目付け柱に向かって座る形になる。目の前にドーンと柱がそびえているのだから、どう考えても演り難いだろう。喜多八は顔を上げて開口一番「どうも柱に向かっておじぎをしているようで」。観るほうもストレスがたまる。僕は幸い「正面」の座席だったが、それでも普通の寄席でいけば、かなり横から見ている感じだ。舞台後方の鏡板の松の絵は邪魔だし、演者が下手を向いて話す場面は、目付け柱のせいで下手側の空間が分断され、情景が広がらない。気の毒なのは脇正面で、舞台に向かって左前列の客は、ほとんど演者を真横から眺め、その向こうに正面右前列の客の顔が見えるという状況だっただろう。演者と正対する脇正面席の多くは、演者が柱の死角に入るため、ほとんど使えない。演者は長い橋掛を歩いて舞台に向かうため、出の拍手は座布団まで続かず、気持ちの悪い間が開く。あーもう文句だらけ。

収穫は圓歌。足が相当弱ってしまっているようだったが、声は思った以上に張りがあり、所作もしっかりとしていた。売防法前の吉原を知っている者にしか語れない、実にくだらなくエロティックな座敷での遊びを紹介してくれた。「坊主の遊び」は、年を取ってから遊びに狂った旦那の造形がとても可愛い。元気な頃の「中沢家」のイメージが強すぎて、圓歌の分かりやすいギャグを連ねていく高座は、寄席なら楽しみの一つとしていいと思うが、わざわざホールで聴こうとは思わなかった。でも、今日の高座に接してかなりびっくり。ふわっと軽くどこにもリキみがない「坊主の遊び」は上々の一席だった。