柳家喬太郎・神田山陽二人会

横浜にぎわい座にて

柳家小ぞう 「子ほめ」
神田山陽  「鼠小僧とサンタクロース」
柳家喬太郎 「カマ手本忠臣蔵
仲入り
神田山陽  「七人の猿蟹侍」
柳家喬太郎 「猫久」

初めてのナマ山陽。とてもいい。若き日のねずみ小僧がサンタクロースに出会い、義賊になっていく顛末を語る。スケールの大きな物語世界をとても映像的に作り上げていた。小技の効いた笑いの中に人情噺風のしんみりさせる部分もあり、物語の世界に引き込まれた。

「七人の猿蟹侍」は、猿蟹合戦の勝利者側(猿、臼、蜂、栗など)が映画「七人の侍」の向こうを張って、猿たちに虐げられる鶏の村を救うという設定に、どんなふうに物語が広がるかと期待したが、「この後が面白い」でおしまい。言葉を噛む場面も多く、こちらは少々期待はずれ。

喬太郎「カマ手本」では、落語家が忠臣蔵を演じればというマクラを振る。志ん朝の声色で大石内蔵助をやって拍手。浅野内匠頭は「あんまり賛同を得られないかもしれませんが」と前置きして「花緑がいい」と言う。まばらな拍手でやはり賛同を得られず。堀部安兵衛談春、その心は「話せば分かりそうだから」。昇太は「荻生徂徠のところにいる書生」で賛同の拍手。確かに昇太は書生が似合いそう。白鳥は「松の廊下であたふたする役人」。これまた声色をやって大爆笑。で自分は何かと言えば「畳屋」で、渋いところを取っていく。こうなると吉良はだれに演らせるのか客の期待は高まる。というか、あそこにいた客の8割方は「談志」という言葉を待っていたはず。そこに「権太楼」という意外な名前をまず出して、「それかやっぱり談志師匠でしょうね」。でもって、2人の吉良を声色で演じ分ける。「そんなの抜いてどうしよってぇの? 斬るの? 斬れば?」と権太楼の憎憎しい吉良は散々煽っておきながら最後に平伏して「ごめんなさーい」。うんうんまさにそんな感じ。談志の吉良は予想通り勅使供応役の何たるかを理詰めで説いて浅野を責める。声も手振りも言葉の内容までいかにも談志で拍手喝采大爆笑。「どっちが斬りたくなるって言ったら、やっぱり談志師匠でしょうね」。
本編は、浅野と吉良のホモだち関係に生じた痴話喧嘩が刃傷の原因だったとするお話。浅野の馬鹿殿の壊れっぷりが最高だった。

「猫久」は残念ながらいまひとつ。もともとこの噺は極め付けに地味である。先代小さんの黙っていてもこぼれ落ちるようなフラがあればこそ、淡々と演って可笑しみがじわっと湧いてくるが、喬太郎の持ち味とは方向が違うだろう。柳家の噺ではあるが壊してもよさそうな気がする。