志らく百席

横浜にぎわい座

立川志らべ 「持参金」
立川志らく 「火焔太鼓」
立川志らく 「粗忽長屋
仲入り
立川志らく 「名言365」コーナー
立川志らく 「子別れ」

この日の三席は、どれも「志らく落語」とも言うべきオリジナリティ溢れる噺。まだ「百席」で演っていなかったとは意外な感じがした。

「火焔太鼓」。こんな汚い太鼓をお屋敷に持っていったらどんな目に遭うか? 道具屋のかみさんが想像力の限りを尽くして旦那を脅かす場面がいい。落語ファンの誰もが知っているスタンダードナンバーの「火焔太鼓」。その噺の中の笑わせどころの一つであるこの場面は、当たり前に演ってたんじゃあ、初めて聴いた客以外はもう笑えない。これくらい大げさに馬鹿馬鹿しく演じてちょうどいい。志ん生の「火焔太鼓」は志ん生だから笑える。志ん生でない者が今の時代にこの噺をそのまんまやろうとしても、ただ上手いだけでは、「まあ上手かったんじゃない」止まりである。全編、狂騒的なドタバタ劇にした志らくの料簡に拍手。

同じことが「粗忽長屋」にも言える。これまた落語を聴き続けていれば、いろんな演者で耳にタコができるほど聴くことになる噺。ナンセンスの極みとも言うべき強烈な噺だけに、演者が噺に負けてしまっていることが少なくない。志らくの「粗忽長屋」は、話がもともと持つナンセンスさを増幅させる方向で爆笑を生んでいた。

「子別れ」。多くの噺家がこぞって演じる人情噺。これまた耳タコで、この噺で客を泣かせようたって無理である。志らくの「子別れ」は笑い七割の泣き三割。この按配がいい。泣かせどころに出てくる八百屋がしんみりとした雰囲気を一気に爆笑に変える。お見事。

三席とも志らくで何度も聴いた噺だが、「子別れ」はいつ聴いても笑わせてくれる。三席ともそれぞれ志らくらしい工夫に溢れているが、やっぱり八百屋を絶妙なアクセントにしている「子別れ」の完成度が一番高い。いつか「強飯の女郎買い」から通しで聴いてみたい。演ってくれないかな。