若手研精会OB連落語会 昔若庵

国立演芸場にて

春風亭一之輔 「代脈」
桂平治    「源平盛衰記 木曾義仲
柳亭市馬   「雛鍔
入船亭扇遊  「お見立て」
仲入り
柳家喜多八  「あくび指南」
古今亭志ん橋 「風呂敷」

実力派の中堅とベテランが揃った渋い面子。かなり楽しみにしていた落語会である。

開口一番は二ツ目の一之輔。なかなかお上手。

平治の源平は客席をワンワン沸かせていたようだが、直前に食べた太巻きとおいなりさんで腹の皮がつっぱれば、目の皮がたるむのたとえ、猛烈な眠気に襲われ、ほとんど寝てしまった。残念。

市馬の「出」はとても気持ちがいい。この人が長身を少しかがめながら、ほどのよい笑顔で登場すると、今日はどんな噺を聞かせてくれるのかという期待感が自然と高まる。
明るくリズミカルで綺麗な高座はちょっと志ん朝を彷彿とさせる。演題が志ん朝が得意にした「雛鍔」だけに、余計に重ねて見てしまった。例のごとくとても安定した芸。誤解を解き、お互いが非を認め、これまで通り付き合いをしようと和解に至る植木屋と旦那の会話は抜群のテンポで、江戸庶民のコミュニケーション能力の高さというか、大人の知恵のようなものを上手に描いている。植木屋が職人にしては少し品が良すぎる感もあったが、まずは見事な一席。

扇遊。これは好み問題だけど、ちょっと薄味に感じた。喜瀬川花魁はもっとわがままに、木兵衛大尽はもっとしつく鈍感に描いて、間に挟まる若い衆喜助をもっともっと困らせてほしかった。

喜多八。このところ、一番聴きたいと思う噺家談春からこの人に変わりつつあると感じている。もちろん、談春は相変わらず良いんだけれど、現時点のベスト・フェイバリットは喜多八である。先に出た平治に「アヘン中毒患者みたい」と言われた喜多八の「出」は市馬とは対照的。いつものように気だるくやる気のなさ100%の登場が、しかし、猛烈な期待を抱かせる。もう完全に喜多八の術中にはまっているな。
観ているこちらにまであくびがうつってきそうなお師匠のあくびと、せかせかと落ち着かない八五郎の所作の好対照。噺がサゲに向かって進んでいくのが惜しいと感じさせる大満足の一席。

志ん橋。確かにうまい。だけど志ん生が作った名作クスグリの数々をそのまま2007年に持ってこられてもなあ…。ノスタルジックな気分には浸れたが。