上方落語の花形来る!追加公演

用件が重なり行けなくなった気の毒なおじさんからチケットが回ってきた。博品館劇場に急ぐ。

桂佐ん吉 「始末の極意」
桂吉坊  「鷺取り」
桂吉弥  「地獄八景亡者戯」
仲入り
桂小米朝 「天狗裁き
桂吉坊  「足上がり」

佐ん吉初見。プロフィールを見ると1983年生まれの23歳。2001年9月に吉朝に入門とあるから、キャリア5年半。高座度胸があり口跡もよく明るい。総じて上方の若い落語家には、東京の前座によくある、聞いている方が恥ずかしくなるようなのが少ない。米朝一門の鍛え方によるのか、上方のお笑い偏差値の高さによるのか、そこらへんは分からないが、普通に安心して聴ける高座。これからが楽しみ。

吉坊。1981年生まれの25歳、キャリア8年。若い。でもって堂々と二席やってトリを取るんだからたいしたもんだ。達者とはこの人みたないことを言うんだろうな。ただ、自分の好みかと考えると判断は留保したい。童顔とそれに似合わない落ち着いた高座さばきとのギャップのせいで、どうも安心して噺に集中できない。
トリネタの「足上がり」、丁稚が旦那の部屋でお茶菓子をつまんでしまう描写などホント可愛らしいなと感じるのだが、旦那や番頭を演じるとあの顔が邪魔をして「無理をしている感」が出てくる。目をつぶって聴けば違和感はなくなるか? 吉弥がたっぷり「地獄」をやった後に、小米朝に露払いをさせて、「足上がり」なんて難しいネタを東京の客に聞かせようというのだから、鼻っぱしらの強さは相当のもの。これからどんな落語家になっていくのか楽しみなことは間違いない。

吉弥。1971年生神戸大学教育学部卒の35歳。米朝一門のホープは姿よし声よし華のある高座。「地獄」は創作のセンスが問われる噺。「長崎は今日も雨だった」の替え歌を入れ込む「お行儀の悪さ」はとても楽しかったが、他の部分ももっとオリジナリティーを出してほしかった。きれいな落語家なので、もしかしたら似合わないかもしれないが、「地獄」には相当毒のある笑いを盛り込んでもいいように思う。吉朝亡き後、米朝落語のエッセンスを引き継いでいく可能性を持つ1人。これからもなるべく多く聴いていきたい。

小米朝。屈託なく明るい高座は聞く者をほんわかと暖かい気分にさせる。「天狗裁き」。実は難しい噺だと思う。完全にネタバレなストーリーを、女房、隣人、大家、奉行、天狗の演じ分けで、繰り返し、そして徐々に大きく笑わせていかなければならない。特に最後の天狗は、俗世から異界へと別次元の雰囲気を醸す必要がある。それをきちんと演ってくれた。短い高座ながら満足度は一番だった。