談春七夜アンコール「雪」

横浜にぎわい座にて


立川談春 「除夜の雪」
仲入り
立川談春 「夢金」


開口一番代わりに弟子のこはると見習いの男性がなぜかメイド服姿で登場。談春の弟子になって良かったこと悲しかったことをたどたどしく発表する。悲が喜を大幅に上回っている様がよく伝わる。師匠に談春を選んだ勇気に拍手。でも、談春が談志に弟子入りした時に要した勇気はそんなもんじゃなかったろうなどと思っているうちに、談春登場。談春七夜が終わった後に感じた荒涼とした心象風景を語る。あれだけの思い入れと決意で望んだ七夜の最終日、客の割れんばかりの拍手の中で、凄まじいばかりの孤独を感じたと言う。ゆえににぎわい座での再演は七夜の「野辺の送り」だとか。
今日のテーマの「雪」について長めのマクラを振る。談志入門時のエピソードである。17歳の少年が憧れの世界に不安とともに足を踏み入れた時に、降っていた春の淡雪。23年前の入門時の記憶が雪と分かちがたく結びついていることを、笑いを織り交ぜしっとりと聞かせる。

「除夜の雪」は七夜の時よりも良かったように思う。噺そのものが11月よりも、新年を迎えたばかりの今の季節に合っているし、新しく綺麗ゆえに少々寒々しく感じるにぎわい座の雰囲気もこの噺向きである。庫裏で繰り広げられる坊主たちのやり取りは前回よりもさらに静かに淡々と進んで行った。笑いは少ないが、この噺はこれくらい静かに進んでいった方が、後半の怪談話じみた展開にスムーズにつながっていき、寺の大晦日の1日を切り取った物語世界の輪郭がクリアになる。東京では談春でしか聞けない噺だけに、今後もどんなところに手を入れていくのかとても楽しみ。

「夢金」。談春が演ると、夢金の浪人は本当に品性下劣な感じになる。ここまでこの男が崩れたのには、どんな過去が影響しているかとつい考えてしまう。落語界きっての強欲野郎、船頭の熊蔵が可愛く見えた。