桃太郎三番勝負第三夜

博品館劇場にて
春風亭昇吉  「たらちね」
昔昔亭桃太郎 「春雨宿」
立川談春   「紙入れ」
仲入り
対談 桃太郎・談春
昔昔亭桃太郎 「死神」

暗闇落語会での談春「死神」で、主人公は無事ロウソクに火を移し変え生き残った。ただし、人間から死神に転じてしまったという意味で、主人公に待っていたのは肉体の死よりも絶望的な状況だった。
大銀座で初演を終えたばかりの桃太郎「死神」でも主人公は生き残る。絶望的な生が待つというわけでもなく、ただ唐突でくだらないことこの上ないサゲのために生き残る。様々な演者が知恵をしぼり、様々な死に方を工夫してきた「死神」の、そうした努力をあざ笑うがごとき創作?姿勢に桃太郎の美意識のようなものを感じてしまう。そういえば、対談では「歌舞伎なんかちっと面白くない」「歌舞伎役者と知り合いになって喜んでいる噺家は馬鹿だ」と熱く訴えていた。伝統的様式や本格といったものへのルサンチマンを発散させながら、談春を評価する桃太郎。してみると、桃太郎にとって談春は、本寸法の芸ゆえではなく、きっちり笑わせ泣かせこれだけの人気を博すゆえの「アンちゃんはいい」なのだろうか。
談春「紙入れ」は、「ここで熱演されても困るでしょ」と言わんがごとき力の抜け具合でした。