桂小米朝独演会

にぎわい座にて
桂二乗  「普請ほめ」
桂小米朝 「八五郎坊主」
仲入り
桂歌之助 「佐々木裁き」
桂小米朝 「百年目」

米朝師匠がまたも骨折だそうで…。
それをネタにマクラでウケまくるご子息。この人の明るさにかかるとどんな話も嫌味なく聞こえてしまうところが凄い。「新聞記者の方がいらっしゃっても書かないでくださいね」と断ってした暴露話を一つ紹介。新聞記者じゃないからいいでしょう。
「今日は何を掛けたんや」と問う米朝小米朝答えていわく「一文笛を演りました」。
それをうけて米朝「一文笛か?あれはとうとう演らんままやったなあ」。
小米朝「あんたが作った噺やがな!」
まあそれくらいボケてきているらしいが、そのボケ具合が絶妙におかしいらしい。
小米朝米朝文楽師匠みたいになると思ってたんが、まさか志ん生師匠になるとは」

父親が十八番にした「百年目」を披露した小米朝
米朝の「百年目」は何と言っても旦那が魅力的だった。春の朝、奥の間で茶を淹れながら、穏やかに、からかいをまじえつつ番頭を諭す旦那の大きさが聞く者を引きつけた。小米朝の旦那はかなり違っていてあまり大きくない。芸者、幇間を引き連れて花見のドンチャン騒ぎを繰り広げる番頭を目撃した旦那はかなり慌てているし、奥の間での諭しの場面もゆったりというよりテキパキという印象。
一方、番頭の方はとてもよく合っている。本当に茶屋遊びが好きで、様子も金払いもよくて芸者衆たちにモテてるんだろうなと思わせる。軽くて陽気で憎めない幇間もいい。
「百年目」は、店での小言場面の「陰」、花見場面の「陽」、奥の間での諭しの場面の「静」という肌触りの違う3つ場面のメリハリでドラマに起伏をつけるのが普通だろうが、小米朝版は小言場面もさほど陰気じゃなくて、陽・陽・陽といった感じ。決してけなしているんじゃなくて、出てきただけで周囲を明るくする小米朝の個性の強烈さに感じ入った次第。