柳家三三独演会

東京芸術劇場小ホール2
春風亭一之輔 「引越しの夢」
柳家三三   「夢金」
仲入り
柳家三三   「言訳座頭」

「若手有望株」の評判高い一之輔。はじめて聴きました。
柔らかい声でゆったりと落ち着いた高座。「これはなかなかいいじゃない…」と思って間もなく意識を失ってしまった。ほとんど何も覚えていない。大変申し訳ない。4月の「いつかは名人会」では、体調を整えてしっかり聴きます。

三三登場。マクラで正月の寄席風景を語り、「夢金」へ。芸術劇場で「夢金」とは、三三くんファイターだな。彼の客層をよく知らないのだが、怪談噺や政談もの、講談ダネでのキレの良さを思うと、ある程度談春と重なっているように思う。しかも、ここは三三自身が開口一番を務めた談春七夜と同じ会場である。その七夜で談春は雪の大川の情景がクッキリと浮かび上がる見事な「夢金」を演じた。そして三三が…。
いいな、こういうの。「今日は冬の話をします」と言って「欲深き人の心と…」と三三が始めた瞬間に、あの会場にいた客の2割くらいは「おっ」と思ったんじゃないだろうか。挑戦する姿勢、立ち向かう姿勢に心の中で拍手をする。
落語ファンにはつくづくいい時代だと思う。
僕が落語を聴き始めた頃、円生70台後半、小さん60台前半、馬生50歳前後、談志、志ん朝小三治が40歳前後。
そして2008年1月現在、談志72歳、小三治68歳、志の輔53歳、昇太48歳、喬太郎44歳、談春41歳。三三に至っては33歳。
意見はいろいろだろうが、僕は30年前と決して見劣りしていないと思う。幅の広さで言えば今の方が上と言える。
三三「夢金」はクスグリを抑えてストーリー展開に重点を置き、すっきりとまとめた感じ。船頭熊は欲張りなだけでなくすこし好色な味付けで、憎めない人物に。
「言訳座頭」はナマで始めて聴いた。座頭富市は弁が立つというより強情。後先を考えない強弁の裏に境遇ゆえの拗ねが垣間見えてなかなかに奥深い。