立川談志落語会

麻生市民館にて
立川志らべ 「浮世根問」
立川談修  「目黒のさんま」
立川談笑  「片棒」
仲入り
松元ヒロ
立川談志  「田能久」

月曜6時30分に新百合ヶ丘はハードルが高く、志らべがサゲにかかるあたりで会場到着。
談修「目黒のさんま」を聴いてこの噺の難しさを改めて感じる。超有名なこの噺、実はそれほど笑いの多い噺ではない。世間知らずの殿様に好感を持てるか、当時の目黒の牧歌的な風景が浮かび上がるか。その二点で良し悪しがほぼ決まってしまうと言ってもいいような噺だろう。先代馬生ファンの僕には、あの何とも可愛い殿様像が強烈に焼きついている。それと談修の殿様を比較するのはさすがに気の毒。きれいな口跡で丁寧ではあるが、フラの少ない談修には合い難い噺だったかもしれない。
客席の硬い雰囲気を変えたのが談笑の「片棒」。地元在住と思われるご年配の客が多い中、強烈に危ない「片棒」を掛ける。ジャニーズ、ディズニー、ユダヤ人という最もふざけてはいけない題材を弄ぶ「改作(怪作)片棒」をキャパ1000人の公民館で演る談笑の蛮勇に拍手。雑誌なら一発で廃刊ものである。
仲入りを挟んで、松本ヒロも危ない空気を引き継ぐ。それを談志師匠が喜ぶと思うとついやってしまうという言に納得。「僕がやっているんじゃない、談志師匠が乗り移るんです」と言いながら、宮内庁民営化案を披露。秀逸な陛下の声色に、躊躇しながらの爆笑が客席から湧き上がる。裏口から帰るとのことだが、ご無事を祈る。
そして満面の笑みを浮かべて家元登場。いつもの「死にたい」話から入るが、明らかに今日の調子は良いようだ。余人では聴く機会の滅多にない「田能久」を、司馬遼太郎もかくやというごとくの余談(談志ロジック)で膨らませ1時間に及ぶ長講。家元のサービス精神にあふれた高座を堪能。