JAL名人会

深川江戸資料館にて


柳家太助  「太鼓腹」
神田織音  徳川吉宗の話
笑福亭松喬 「住吉駕篭」
仲入り
あしたひろし  漫才
   順子
立川談春  「棒鱈」


深夜勤続きの疲れで、太助と織音の出番はウトウトと眠りの中へ。松喬登場で背筋を伸ばして噺に集中。
「住吉駕篭」は良かった。松喬はもっと脂っこいイメージがあったが、スッキリとした構成で、酔っ払いの「あら熊さん」的パートもしつこくなく、自然に笑いが込み上げてきた。声も表情もアクションも抑え目で、とても心地よい一席。改めてこの人うまいなと感じ入る。

久しぶりに順子さんのご尊顔を拝謁。今日の服装は、いつもの順子さんからするとだいぶ地味目だった。ひろしさんはまた一段とおじいちゃんに。もっとも85歳だから当然か。ひろしさんに以前のようなスピードがなくなったのは残念だけど、その分、順子さんのジジイいじりがフィクションの枠を超えリアルに迫ってくる。
十年一日のネタ、偉大なるマンネリ。なのに噴き出す。やっぱり文句無く面白い。2人の漫才を観ていると、「次ぎは何をしゃべる」という思考は一切存在していないように感じてしまう。無意識の中で勝手に身体と口が動いているかのごとき流れるような構成。あと何年このコンビを観られるかな。

談春のマクラは面白い。今回は3年前に「JAL名人会」に出た時の悪戯を語る。前の出番の演者たちが、マクラをそこそこに持ち時間一杯噺を語る展開に、ひねくれ者の談春はマクラで笑わせてやれと反則技を繰り出した。「いつも楽しい全日空」「一家に一台全日空」などと全日空を褒め上げその挙句「全日空万歳!」。これでJALの機内放送には流せまいとほくそ笑んだ談春。しかし、録音スタッフが洒落の分かる人で、その部分をカットせずに機内放送に流した。で後日談。JALに乗って談春のこの落語を聴いた永六輔が自分のラジオ番組で「JALの落語会で全日空万歳と言った談春は偉い。それを流すJALも偉い」と語った。これがJALの偉いさんの耳に入り、たいそう不興を買った。その偉いさんは現在JALの役員に出世したそうな。
だから談春は「もうここには呼ばれないと思っていた」と言う。それを呼んだのだからJALもなかなか懐が深い。でも、今日の高座、果たしてノーカットで流せるだろうか。JALに乗る予定のある方は、このくだりが残っているか確認して教えてください。
手馴れた「棒鱈」。お見事でした。