志の輔らくご in PARCO 再び

パルコ劇場にて


立川志の輔 「七福神
立川志の輔 「歓喜の歌」
仲入り
立川志の輔 「徂徠豆腐」


七福神の新年会」が「七福神」に改題。内容は同じだったが、細部を微妙に変えていた。紐を使ったマジックがなくなり、色紙に漢字を書いていくという件が入る。サゲも改変。「あなたたち愛嬌ありすぎ」が「何とかしてください神様」(だったかな?)に変わっていた。短い間にきちんと噺に手を入れているんだなあ。「歓喜の歌」はホントによく練り上がっていた。「徂徠豆腐」もじっくり聞かせた。

幅広い客層を自分の世界に引き込み、自在に操る技量は凄いの一言。仲入りになって客席の照明が灯ると、目のまわりを赤くした女性客がそこかしこに。これだけ客から思い通りの反応が返ってきたら、演者としても気持ちいいだろうな。

改めて志の輔の力を感じて十二分に堪能した三席だったが、前回の「メルシーひな祭り」や今回の「歓喜の歌」「徂徠豆腐」のようないい人たちが登場する心温まる噺は、こう続けざまに聴くとさすがに胃にもたれる。もちろん、続けざまに聴く方が悪いだけの話ではあるが・・・。

考えてみると志の輔は名人ものや政談ものも好んで演る。心改め努力した人や正直者が幸福になるような噺の世界は清々しく気持ちよい。初春の公演に向いているとも言える。終演後に流れたのは笹川美和の「笑」。「笑い笑え泣き笑え♪」の歌詞は今夜の公演の性格を見事に表していた。いい話に感動して帰路につく。それを連日高いレベルで実現している志の輔は間違いなく凄いと思う。

ただ、2回のパルコ公演に足を運んで、泣き笑い系の心温まる噺とは全く違うジャンルの噺も聴きたいという気持ちが強くなったのも事実。できれば少々陰惨だったり後味の悪さはありながら人間の欲や本音が表れている噺をパルコ公演に潜り込ませるのもありではないかと感じた。「志の輔は凄い」というのはここに来ている客はみんな理解している。次は「落語って凄い」もこの公演で感じさせてもらえればいいなと、これはわがままな客のわがままな願いである。