ビクター落語会

仏教伝道センターにて
柳家ごん坊 「たらちね」
柳家喜多八 「やかんなめ」
瀧川鯉昇  「味噌蔵」
仲入り
柳亭市馬  「阿武松
柳家喜多八 「もぐら泥」

喜多八、鯉昇、市馬というお気に入り3人が揃って、しかも喜多八は2席と来るんだから堪らない。
人が狼狽する様、困り果ててパニックに陥る様を描かせて喜多八の右に出る者はちょっと思いつかない。「やかんなめ」も「もぐら泥」もそんな喜多八にぴったりな噺だから、抜群の面白さである。抑揚を強調した「やかんなめ」の侍の話し方はとても興味深い効果をもたらしていた。一ッ調子上げて「よくぞ身供を呼び止めた」と言い一人合点する侍のセリフの繰り返しは、コメディーの基本文法だが、喜多八のアクセントを効かせた発声は、侍女の発言を封じる効果も抜群で、侍が勝手に話し続ける間に困り果てているであろう侍女の様子をありありと想像できる。演じていない人物の心理まで伝えてしまう見事な演出である。怒る侍、泣く侍女、笑う供侍。3つの感情が噴出する場面をテンポよく進行させる手際の良さはさすがの一言。小三治十八番の「もぐら泥」も、現時点では「喜多八の噺」と言って差し支えないように思う。