史上最笑の二人会 笑福亭鶴瓶vs昔昔亭桃太郎

春風亭昇々 「たらちね」  
昔昔亭桃之助「熊の皮」   
昔昔亭桃太郎「ぜんざい公社」
仲入り       
トークショー 桃太郎・鶴瓶・桃太郎妻           
笑福亭鶴瓶 「青木先生」

鶴瓶と組んでもいつもの桃太郎。気負わない、何もしない、くだらない、それでいて面白くってしかたない。久しぶりに聴いた「青木先生」は無駄をそぎ落とし鋭い切れ味に。

立川志の輔独演会

エポック中原にて
立川メンソーレ「子ほめ」
立川志の輔  「親の顔」
仲入り
立川志の輔  「徂徠豆腐」

メンソーレくんの高座はたぶん始めて。落研出身ということを割り引いても達者なもんだ。相当に稽古熱心なのではなかろうか。
志の輔二席は地方公演の定番で大爆笑をさらう。

かもめ亭 百栄・兼好二人会

文化放送メデアプラスにて
春風亭百栄 「桃太郎DV」
三遊亭兼好 「七段目」
三遊亭円橘 「雁風呂」
仲入り
三遊亭兼好 「元犬」
春風亭百栄 「素人義太夫

なるほどと思わせる組み合わせ。ここに白酒を加えた3人衆で、白鳥、喬太郎、市馬の「それぞれのシリーズJr版」なんて面白そう。役回りは百栄←白鳥、兼好←喬太郎、白酒←市馬。

柳家小三治独演会

にぎわい座にて
柳家一琴 「片棒」
柳家小三治「猫の茶碗」
仲入り
柳家小三治「猫の災難」

吉祥寺に続いて小三治の見事な高座。一席目の1時間弱に及ぶ枕は「猫の茶碗」への導入というよりむしろ聞きごたえたっぷりの「ま・く・ら」。この“刀鞘奇談”(と勝手に名付ける)は私的には「駐車場物語」に比肩する。猫でそろえた二席は見事の一言。

柳家小三治前進座寄席

前進座劇場にて
柳家三之助金明竹
柳家はん治「千早振る」
柳家権太楼「代書屋」
仲入り>
林家正楽 「紙切り
柳家小三治「青菜」

久しぶりの小三治は俳句の枕を振ってまるで季節外れの「青菜」へ。
なーんだ軽く演って終わりかと思ったら、とんでもない高座でした。計っちゃいないが噺の部分だけで30分くらいはあったのではなかろうか。「青菜」がこんなに深くなろうとは…。
最後に爆笑を生むための仕込みに終わりがちな「青菜」の前半部分。ところが、小三治はこの前半で、植木屋の屋敷暮らしに対する憧れを丹念に丹念に描く。「鞍馬から牛若丸が出でましてその菜を…」の隠し言葉に接した植木屋の感心ぶりはちょっと常軌を逸するほど。「本当にその場でああいう言葉が出てくるんですか」「本当は植木屋を驚かしてやれって、前の晩にでも相談してたんじゃないですか」と驚き、感に堪えない様子なのだ。
植木屋の商売をしていれば、立派な屋敷での仕事なんていうのは日常であり、この屋敷の主人程度の金持ちとの付き合いも多かろう。にも関わらずの驚きぶりには植木屋が旦那衆に抱いてきた複雑な思いが見え隠れする。「これがお屋敷だよ。広い庭に木がたくさんあって、氷がざくざく出てくるからお屋敷ってわけじゃないんだ。こういう隠し言葉なんぞを使うところが本当のお屋敷だよ」と怒ったように独り言つに至って、植木屋がじっと隠し持っていた旦那衆への反感がはっきりと姿を表す。おそらくこの植木屋、仕事のうえで嫌な思いを相当してきたのだろう。良かれと思ってやった工夫に文句をつけられ、職人としてのプライドを傷つけられることもあり、旦那衆に対して「何も分からねぇ成金野郎が…」という反発を溜め込んできたのではないだろうかと感じさせる小三治の演出である。
「青菜」という噺、煙草を吸っている植木屋に旦那が「ご精が出ますな」と声をかける場面から始まる。それに対して植木屋は「旦那のようにそう言っていただけると助かるんで。植木屋を使い慣れない人に言わせると、植木屋はのべつ煙草ばかり吸っているように言いますが…」と実は煙草を吸いながら仕事の思案をしているのだと返答するわけだが、本当にそうなのかどうかは不明である。小三治「青菜」では後段、帰宅した植木屋がかみさんに先ほどまでの出来事を説明するくだりで、「いつものように煙草を吸ってサボっていたらよう」というセリフを入れている。このセリフは凄い。実はサボっていて、それが「いつも」のことだという事実は「どうせ奴らは金を持っているんだから、仕事は日数をかけて手間賃をふんだくってやろう」という植木屋の旦那衆に対するルサンチマンまで感じさせる(言い過ぎか)。
ところが、今度の旦那ときたら「ご精が出ますな」と声をかけ、酒やら鯉の洗いやらで接待してくれる。この時点で植木屋は「今度の旦那はちょいと違う」「職人を使い方をわきまえてやがる」と感じているはずで、留めの隠し言葉で完全に心服してしまう。まさに心服とか畏敬という言葉がピッタリくるほどの感心ぶりを丹念に描くことで、植木屋が柄にもなく隠し言葉を「死ぬまでに一度やってみたい」と思う気持ちが聞き手の胸に自然に入ってくる。植木屋の気持ちが痛いほど分かった後での後段のドタバタは単に面白いというだけでなく、切なさまで伴ってなんとも見事な一席でした。